『DVはなおる 被害・加害当事者が語る「傷つけない支援」』日本家族支援センター編 1
「警察庁のデータによれば、この10年で、夫婦間の傷害件数は漸増していますが、殺人事件は漸減しています。もともと夫婦間暴力はあったけれど、それが立件されやすくなったということだろうと思います。いずれにしても、DV防止法の施行後も防止されるでもなく、減少するでもないDVとは一体何なのか、冷静な判断をしたいものです。」
「DVや虐待などの家族間暴力は許されざる行為、犯罪であるとの社会的合意があるけれど、我が国の支援においてはその表面的な事象に囚われ。原因や防止対策についての理解や支援はほとんどなされていません。」
「巷の言説では「DV加害者は変わらない」、加害者は人格的に問題があり、教育やプログラムで変化するものではないと言われています。が、その根拠はあいまいです。日本家族再生センターでは多くのいわゆる加害者は脱暴力への変化を見せていますから、「支援がなければ加害者は変わらない」ということかもしれません。」
「加害者と言われる人たちは一般に外面はいい、責任感が強い、真面目、という一見、社会的には優れたタイプの個性を持つ人が多いようです。実際、他の刑事事犯の犯罪者のような社会階層との相関はなく、大学教授などの教育者、医者、宗教者、警察官など、社会的責任の大きいポストにいる方たちの割合も一定数あり、どんな社会階層の方も加害者として来談されます。その多くは決して粗暴だったり、暴力的な言動をしたりする方たちではありません。」
「その方たちの共通する資質は、自己肯定感が低く、役割意識、他者の承認や評価に依存する傾向が強く、さらに対人スキル、対話スキルが低いという傾向があります。」
「多くの加害者の心理は、脆弱な自我を家族の攻撃(?)から防衛するため、力で家族をコントロールするという、無意識領域での瞬間的な心の動き(情動)があります。これはいわゆる精神分析で言う防衛機制に近いもので、その無意識の心の動きやその結果の行動を「これは怒らせた家族が悪いんだ」と意識し、暴力を正当化します。」
「すべて妻の言動があったの暴力であって、暴力は悪いとはわかっているけれど、何度言っても妻が問題に向き合ってくれないので、つい感情的になってしまった……と自分の暴力を正当化する傾向があります。これが職場の人間関係であれば、問題があってもいきなり暴力にはならないけれど、そのことには気づきません。このように家族と所有の関係に縛られていることには無自覚で自分の問題とは理解できず、妻の問題に転嫁してしまいます。」
「DVやモラハラに耐えられず、妻が家を出たり、保護命令の申立てをした時、初めて夫は妻をコントロールできない状態に陥り、自分の問題と向き合わされます。妻にしてみれば、夫の暴力によって家庭はすでに壊れていて、夫の暴力から自分を守るために家を出るわけですが、夫にしてみれば、妻が家を出ること、離婚となることで家庭が壊れてしまうので、なんとか離婚を避けて家庭を守りたいとの思いがあり、家族、家庭に対する意識にかなり違いがあります。」
「非言語的なコミュニケーションについても日本人はとても不得手で、顔の表情や身振り手振りなどの態度で表現をするのも不得手。特に男性は、感情を表すのは恥ずかしいこと、みっともないことと学んでいて、感情の言葉を口にしたり、感情を態度で伝えることもとても不得手です。」
「そんな加害当事者に対し、「DV・モラハラはダメ」と言ったところで、わかったフリをするだけ。パワーコントロール以外の自我防衛のスキルを身につけることで、問題解決することが現実的な方法です。具体的には、自分の価値観やこだわりや癖など、無意識的なところも含め自分を理解することで、理想の自己と現実の自分の不一致が見えてきますが、自分のあるがままを受け入れるためのセラピーは有効です。」
とりあえずここまで。
加害者は何故加害をするのかに焦点を当てて、
加害をしてしまうような状態を変えることでDVを無くしていくという視点が
日本社会では不十分で、それができる仕組みを作る必要性を感じました。