『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』龍 たまこ (著), 中川 瑛 (その他)

この本の最大のポイントは「和解しないこと」だと思う。

「僕は「人は学び変わることができる」と信じています。そして、それがこの傷つきの連鎖を止めるための、最も重要な考えだと思っています。暴力が連鎖するように、ケアもまた連鎖すると信じて、そのケアの始まりの場所を作るために活動しています。」

「被害者の方が、加害者を許す必要も、義務も決してありません。」

「お前の母親と別れてもこうして旅行に連れて行ってやってるんだ

 少しは楽しそうにしたらどうなんだ」

「あんたなんか毒親だって言ってるのよ」

「あんなやつ生命保険でもかけてさっさと死んでくれればいいのに」

ダブルバインドと言ってね 相談したら「自分で考えろ」と言われ

自分でやったら「勝手にするな」と言われるようなハラスメントがある

そういうことが続くと自信をなくしてしまう」

「はいはい わかりましたよ離婚しましょうね

 なぜ怒るんです?離婚、したいんでしょう?」

「ストレスが溜まって余裕がなくなると、自分の思い通りでないことが起きた際に簡単に

腹を立てて家庭で爆発してしまうとDV加害者はよく言います。

 これは、「職場では我慢しているのだから、家庭は自分の思い通りであるべきだ」という甘えが背景にあります」

「GADHAは「パートナーとの関係を取り戻す」ことを目的をしていません。それは人の意思を変えることを意図していて、他者を道具として扱うことです。」

「私も、私の父を許せません。もう顔もわからないし生きているかどうかもわかりませんけど。もし、昔の父とは変わっていたとしても、優しいおじいさんになっていたとしても、それすら知りたくない。だって許さなきゃいけないって思ってしまうから」

「小さかったわつぃは本当に傷ついたのに、その傷を一生負ったまま生きていくのに

「許しましょう」なんておかしいでしょう?あまりに理不尽じゃないですか」

「ずっと胸の中で小さい自分が怒ってた。どうせ誰も助けてくれない。誰も守ってくれない。だって、一番守ってほしかったお父さんにすら守ってもらえなかったんだから。」

主人公は2人。

DVをして離婚した父と、強い言葉で叱責を受けて育った娘。

それまで「叱ることができる俺、有能」と思っていた父が

離婚後の親子面会で娘から「毒親」と言われたことがきっかけで

虐待やDV、ハラスメントについて調べ始める。

彼は職場でも部下のことを気遣うようになり、

それが結果的に部下の成長にもつながり人望を得ていく。

こういう本を書こうとすると、どうしても作者は

「最初は拒否していた娘、しかし偶然の出会いから今の父の姿を知る。

変わった父親の姿を見て、娘も父を許し和解する」

というストーリーを作りたくなってしまう。

中川氏は自信がDVをしていた経験もあり、

そこから学び始めた人なので、

「最後は和解する」というストーリーにしたい誘惑は

相当強かったと思う。

その上でこのストーリーの中で

最後まで和解しないことを娘に選択させた。

やっぱりそこでは「和解しない選択肢」を提示しないと

行けなかったんだと思う。

「だから中川さんすごいね」とは言わない。

男性が「支配をしなかったこと」を褒めるのは

やっぱり男性に下駄を履かせることになってしまうので。